GA のアプリ+ウェブ(App+Web)プロパティを導入してみて分かったこと。実際の導入事例

結論

  1. BigQuery にエクスポートできる点で アプリ+ウェブ プロパティは優秀
  2. ただしレポート機能は発展途上。レポートが充実するまでは BI ツールを使って分析をするのが良い
  3. アプリとウェブサービスの改善のためには、アプリ+ウェブ プロパティに限らず横断的な分析が必須

2019 年より β 版の提供が開始された Google アナリティクスの アプリ+ウェブ プロパティ。

従来の Google アナリティクスと同様、基本無料で使える上に、アプリとウェブを横断的に分析することができるようになりました。

実際のサービスに導入をしてみて分かったこと、良かった点と残念な点、そして導入事例をご紹介します。

アプリ+ウェブ プロパティとは。良かった点と微妙な点

アプリ+ウェブ プロパティは、アプリとウェブを横断的に分析するための新しい Google アナリティクスのプロパティタイプです。

従来のように Google アナリティクスでウェブユーザーを、 Firebase でアプリユーザーを別々に分析していると、それぞれのプラットフォームのユーザーを一人のユーザーとして識別することができませんでした。

従来の計測:1人のユーザーの行動をアプリとウェブでバラバラに計測


一方 アプリ+ウェブ プロパティ では、ユーザーがウェブとアプリをどのように使い分けているか、というプラットフォームをまたいだリアルな分析が出来るようになります。

アプリ+ウェブ プロパティ:1人のユーザー行動をアプリとウェブをまたいで計測
このようにプラットフォームをまたいだ横断的な分析によって、ユーザーの行動を網羅的に把握することができます。

また、アユダンテさんの記事でも紹介されているように、
Google アナリティクスfor Firebaseの仕組みをベースにウェブサイトも計測が出来るようになった】というのが「アプリ+ウェブ プロパティ」
です。

そのため、ホーム画面の見た目やレポートの使用感は Google アナリティクスよりも Firebase に近しいテイストになっています。 (PC ブラウザから見たホーム画面。タップで画像を開きます)

一見万能そうなアプリ+ウェブ プロパティですが、実際導入してみたところ以下の良い点と微妙な点があると思いました。

良かった点

BigQuery にデータをエクスポートできる

これまで、Google アナリティクスの生データをエクスポートするには、有料版の Google アナリティクス 360 を契約する必要があり、予算がある程度確保できる企業でなければ生データを確認するのが実情でした。
しかしアプリ+ウェブ プロパティでは、無料版 Google アナリティクスでも BigQuery へのエクスポートが可能になっています。(エクスポート自体には若干費用がかかります)
(実際に アプリ+ウェブ プロパティのデータが出力されたBigQueryの画面。)
直接 BigQuery データにアクセスすることに慣れていないユーザーでも、Google データポータル(無料)などの BI ツール には BigQuery へのコネクタが用意されているので、簡単なセットアップでデータをビジュアライズすることができます。

残念だった点

デフォルトのレポートが使いづらい

先述の通り、アプリ+ウェブ プロパティでは Firebase に近しいレポートが多く、Google アナリティクス利用者には馴染みの深い「ランディングページレポート」や「集客レポート」などは(今のところ)存在しません。
特に従来の Google アナリティクスに使い慣れた方は、慣れるまで時間がかかるかもしれません。

ヒット数上限がある

Google アナリティクスのアカウントには月間に送信できるヒット数に上限がありますが、アプリ+ウェブ プロパティでも例外ではなくこの上限は存在します。
公式のドキュメントでは
プロパティあたり 1 か月 1,000 万ヒット
と記載されていますが、多くのサービスではウェブよりもアプリの方がユーザーの利用が多いはずので、ヒット数上限は注意する必要がありそうです。

アプリ+ウェブ プロパティの導入手順

今回はすでに Firebase のアカウントを持っている場合の導入手順をご紹介します。

ステップ1:Firebase から Google アナリティクス内にプロパティを作成

まずは Firebase にログイン
  1. メニュー左上の歯車アイコン から「プロジェクトを設定」を選択
  2. 上部メニュー「統合」から Google Analytics リンクを「有効にする」を選択
  3. 上部の Google アナリティクスのプロパティという箇所の青タブ右にある「アップグレードを開始」というボタンを選択
接続する Google アナリティクスのアカウントなどを選択。アップグレードが完了すると自動的に Google アナリティクスにプロパティが作成されます

ステップ2:Google アナリティクスからデータストリームの設定を行う

ここからは Google アナリティクスで設定します。

  1. Google アナリティクスの左メニュー「管理」アイコンを開き、プロパティメニューの「データストリーム」を選択
  2. 右上の「ストリームを追加」より、URL や 名前を設定しウェブのストリームを追加
その後ウェブの詳細設定画面に進むが、「タグ設定手順」にある通り GA タグを設定していく。既存の GA タグがある場合、タグの埋め込み方によって、設定の仕方が異なります。 すでに gtag.js タグを自社サイトに埋め込まれている場合は、Google アナリティクス のトラッキング情報設定からタグ接続すれば、PVもイベントのデータも アプリ+ウェブ プロパティに自動連携されます。
Google タグマネージャでユニバーサルアナリティクスタグを埋め込まれている場合は、GTM 上で新しく アプリ+ウェブ用の Google アナリティクスタグを作成する必要があります。

以上の設定が完了すると、これまで収集されていた Firebase のアプリユーザーのデータに加えて、ウェブユーザーのデータが収集されるようになります。

【導入事例】とある金融系サービスでアプリ+ウェブ プロパティを導入してみた

今回導入したサービス

今回はウェブサイトと iOS/Android アプリを持つ金融系サービスで、 Google アナリティクス アプリ+ウェブ プロパティを導入しました。

サービスが抱えていた課題

今回のサービスに限らず、多くの金融系サービスでは AML (マネーロンダリング対策)などの観点から、詳細な個人情報の収集が義務付けられています。
年齢、氏名などに加えて通常年収や金融資産、本人確認書類画像のアップロードなどが必要となるため、一般的な SaaS 系サービスよりも長い登録導線になりがちです。

当然、登録導線が長いことは多くのユーザーにとって好ましいものではないので、離脱率は90% 以上となってしまっていました。
この登録導線におけるユーザーの離脱率を下げ、ユーザーにサービスを利用(オンボーディング)させることが重要な目標でした。

アプリ+ウェブ プロパティ導入前の取り組み

先述の通りこのサービスにはウェブサイトとスマホアプリが存在し、登録導線についても ウェブ登録導線 と アプリ登録導線 がありました。 どちらの導線もユーザーが登録する内容に違いはありませんでしたが、アプリの方がより使いやすい UI であることなどから、アプリ導線の離脱率が低い傾向がありました。
「ウェブからアプリへ誘導することで全体の離脱率を下げられるのではないか」と考えた担当者は、スマホウェブ登録導線上(情報登録を終えた直後)にアプリインストールの訴求を追加しました。 「突破率の高いアプリ導線へ誘導することで登録完了率も上がるはず」と担当者は考えていました。

しかし実装後に分析をしてみると、登録完了率はむしろ悪化してしまっていたのです。

アプリ + ウェブプロパティの導入

使いやすいアプリに誘導したのになぜ離脱率は上がってしまっているのか?
その要因を探るべく Google アナリティクス アプリ + ウェブ プロパティを導入し、「各ステップの間でユーザーがどのようにデバイスを使い分けているのか」を分析しました。
先述した通り アプリ + ウェブ プロパティのデータはBigQueryにエクスポートができるので、エクスポートしたデータを PowerBI を使ってビジュアライズしました。 先ほどのファネルと比較するとやや複雑に見えますが、ユーザーが登録導線の各ステップを、どのアプリ(ANDROID、IOS)もしくはウェブ(WEB、WEB_SP)で達成したかを表したファネル図です。

この中でスマホウェブ(SP_WEB)ユーザーの動きを見てみると、インストール訴求を追加した「情報登録直後」に半数以上が離脱していることが分かりました。
そして担当者が実際に自分のスマホで導線を再現してみると、その原因が明らかになりました。
実はスマホウェブで登録中のユーザーがアプリをインストールしたユーザーに対して、ログインを要求してしまっていたのです。 セキュリティの関係上ディープリンクなどで本人認証情報を渡すことはしておらず、ユーザーを識別するためにアプリインストール後に再度認証する(ログインさせる)必要があったのです。
ウェブからアプリ導線に進んでしまったユーザーは、登録導線中にも関わらずログインをしなおさなければならず、この体験がユーザーを離脱させてしまっていたのです。

この分析の結果、ユーザーが最初からアプリで登録できるような導線の再設計が行われ、登録率が大幅に改善しました。

このように Google Analytics の アプリ+ウェブ プロパティを使うと、これまでの Google アナリティクスと Firebase では見えなかったプラットフォームをまたいだ分析が可能になり、新しい課題の発見が可能になります

まとめ

ご紹介したように、Google アナリティクス アプリ+ウェブ プロパティはまだまだ発達途上ではありますが、これまで分断されていたアプリとウェブのプラットフォームを統合することのできる可能性に溢れたツールです。
現状で詳細な分析をするためには、デフォルトのレポートに頼らずに BI ツールなどで分析をする必要がありますが、データは早いうちから蓄積しておいた方が良いので、アプリとウェブをもつサービスの運営者の方は、今のうちから アプリ+ウェブ プロパティを作成されることをおすすめします。

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大谷 恭平 (Kyohei Otani)

アイオイクス 社にて SEO、CRO、Web 解析コンサルタントとして活動後、仮想通貨取引所 bitFlyer 社にて、グロースチームリーダー、及びデータエンジニア兼 Web/App 解析を担当。
海外のマーケティング専門家との交流や、セミナーでの発信を通して、日本では馴染みの薄かった CRO(コンバージョン率最適化)の普及に貢献。日本人 2 人目の CXL 認定オプティマイザー。